2021/08/03 23:52


こんにちは。Gordon's gardenpartyです。

2ヶ月近くの休刊?を経て、3月末からはじめたこの一連のシリーズですが、4ヶ月以上かかってようやくファイナルです。
前回までの記事で「Willis and Batesと」という部分のご紹介は完了したのですが、当店では製造がBairstow Brothersに代わった後に生産されたモデルの取り扱いもありますので、最後にその紹介と、Vapalux / Bialaddinにまつわるちょっとした小ネタをご紹介して終わりにしようと思います。




■M320(1997年以降)


Bairstow Brothersへの譲渡前後に、製造年入りの金(銀)プレートが登場します。
金プレート・銀プレートと言っていますが、どちらも日本の俗称で、金プレートはブラス製、銀プレートはアルミ製です。
いつから付き始めたのか、全ての個体に付属していたのかは不明ですが、私が目視で確認しているのは1996年製の銀プレートからで、2000製を最後に2001年からは金プレートに変更されたようです。



Bairstow Brothersに製造が移ってからも、しばらくはWillis and Batesの頃のパーツ在庫を使って製造していたようです。
といっても、違いは黒ノブの刻印の有無や、グランドナットのエングレービングくらいで、他のパーツの仕様は同じです。
2001年あたりから新しく作られたパーツが混ざり始め、2004年頃のモデルになると完全に移行しています。

前回の記事でも書きましたが、2000年以降の生産分は未使用品(NOS、New Old Stock)も多く残っており、定期的に政府関連の競売で放出されます。
これがあとどれくらいあるのか不明ですが、韓国に譲渡されたのが2010年で、現在2006年分あたりまでNOSが放出されていますので、2007年以降にどれだけ生産したかに寄ります。
2007年製というのを見かけないので、2006年が事実上の軍納最後だとするとNOSはかなり個体数が少なくなってきていることが予想されます。


また、私は持っていない(イギリスでは手に入りづらい)のですが、この頃に主に輸出用・市販向けを目的に、M320のタンクに300X(もしくはM1)タイプのフレーム、M320のフードを組み合わせた「M1B」というモデルが発売されています。現行の韓国製でもM1Bはありますが、Bairstow Brothers当時のM1Bのタンク裏にはブロードアローの刻印があったようです。
実物を見ていないのでなんとも言えませんが、軍納品用の在庫を使ったんでしょうか?
軍用でもないのに販売してよかったのかな?

またM320のChromeバージョン(2代目)も復刻されています。この復刻版も持ち合わせていないので詳細は不明ですが、オークション市場で見かけたそれっぽい個体の写真を見る限り、初代の仕様を踏襲しつつ、当時のパーツを使って復刻されたようです。
Bairstow Brothersはこれらのモデルを「Heritage Model」として発売しました。


2010年にはBairstow Brothersも生産を停止し、韓国の企業(現在のVAPALUX. Ltd)に全ての権利と設備を譲渡します。
イギリス製のVAPALUXは、ここで本当の終焉を迎えます。



■Imber Researchモデル


ここからはVapalux / Bialaddin にまつわる小ネタです。
Bialaddinがアメリカ企業のAladdin IndustriesとWillis and Batesの提携によって生まれたブランドであることは先の記事で書きましたが、主に民間・輸出を目的にイギリス国内外に販路を拡大したBialaddinが唯一輸出できなかったのが、Aladdin Industriesのお膝元のアメリカ大陸でした。

Aladdin Industries UKの最高責任者だったJack Imber氏は実業家で、自身でもImber Researchという商社など複数の会社を経営していたのですが、当時はAladdinストーブもImber Researchのロゴを付けて販売しており(現在でいうプライベートブランド的な販売手法でしょうか)、BialaddinにもImber Researchのロゴを付けてアメリカ大陸に輸出するという、離れ業で販路を拡大していました。




上の写真の個体はウルグアイのマーケットプレイスで偶然見つけた「Imber Research 305(Bialaddin 305)」です。こんなモノに興味を持つ人も少ないでしょうから、Imber Reseach 305として日本にある個体はこれが唯一かもしれません。
Imber Researchを冠したモデルは他に、310、315とあるようなのですが、出会うことすら稀で、さらにそれを販売しているとなるともはや奇跡に近いので、今後入手できる可能性は極めて少ないと思われます。

パーツ類はBialaddinと完全互換というか、ロゴを変えただけのモデルです。完全にコレクションの世界です。



■M320の製造年代の見分け方


ご紹介してきたように、一口にM320といっても、世代によってパーツ仕様に微妙な違いがあります。
ところがそれらのパーツの多くは交換が可能なパーツで、モデル間の互換性のよいVAPALUXには、交換によって製造年代がわからなくなってしまうというデメリット?もあります。

そういう背景もあって、当然私も年代特定には複数のパーツの特徴を絡めて判定しているのですが、それだけでは自信が持てないこともままあります。
そういうときに役に立つのがフレームの違いです。
各種パーツを交換することはあれど、フレームまで交換することは稀なので、フレームの特徴は概ね製造年代を正確に表しています。




上の写真は3つの年代のフレームを正面から撮った写真です。
一番左が1970年代、真ん中が80年代、一番右が90年代以降です。
1番右の90年代以降は、ストレートグローブに変更されたこともあって、フレームを覆うグローブガードのワイヤーがあるのでわかりやすいですね。
では70年代と80年代はなにが違うでしょう?
実は正面からでは違いはわかりません。(ちょっと斜め上から撮ってるから、知ってる人にはわかりそうですが)




上の画像は3つの年代のフレームを上から撮った写真です。順番は正面の写真と同じ。左から順に70年代、80年代、90年代と並んでいます。
この角度からフレームを見ると、70年代と80年代のフレームの違いにお気づきになりますでしょうか。

80年代(中)のフレーム上部のリムには、6箇所の補強のコブがありますが、これが70年代(左)のフレームだと、その間にさらに6箇所の小さめの補強コブがあります(端が見切れてて6箇所全部が写ってないですが)。
このフレームの微小な仕様変更がいつ・なんのために行われたのかはどこにも取り上げられていないので不明ですが、他のパーツが70年代を示している個体の多くがこのコブの多いフレームを持っているため、私はこれを70年代フレームとして年代特定に使っています。





終わりに。
Willis and Bates社の創業背景から始まって、彼らが開発・製造したVapalux / Bialaddinの各モデルをその時代背景と照らし合わせながら紹介させていただきました。
多分に私の憶測を含む内容ですので、あくまでご参考程度にという前提ではありますが、こうした憶測を語るのはオカルトの陰謀論を語るのと同じくらい蜜の味でして、書いてる当の本人は楽しくてしょうがありません。
今後新たな情報や発見があればそれを踏まえてしれっと書き直すこともあると思いますが、わざわざ以前の間違いを残して書き足すと読みづらくてしょうがないので、何事もなかったかのように書き直します。その点はご容赦ください。

計8話に及ぶ一連の投稿を全てお読みいただいた皆様は、もうケロシンランタン、特にVAPALUXから抜け出すことは不可能でしょう。
こんなのを最後まで読み切る人は普通はいません。
ここは潔く諦めていただいて、お酒片手に一緒にケロシンランタンを楽しみましょう!