2021/01/13 23:21
こんにちは。Gordon’s gardenpartyです。
vol.3では「炎上」について少し掘り下げてみます。
前回記事はこちら。
プレッシャーケロシンランタンを知ろう vol.2 パーツを知ろう
プレッシャーケロシンランタンを知ろう vol.1 キャンプに最適なランタン
ケロシンランタン界隈?ではよく「炎上」という単語を耳にします。
「タープや周りの荷物に燃え広がっちゃうんじゃ・・・」と不安を煽ってそうな言葉です。なんだかランタンの使い方を間違えると爆発しちゃうんじゃないかとすら想像してしまいますね。これがそもそもケロシンランタンの敷居を高くしている大きな要因のような気がします。
もっと適切な表現がほしいところですが、とはいえ確かに他に適当な言葉も見つからないので、私も「炎上」と言っています。
結論から言うとこの「炎上」。そこまで不安になるような現象ではありません。もちろん爆発もしません。
灯油そのものは危険物ではあるので取り扱いには注意が必要ですし楽観してはいけないですが、過度に恐れる必要もありません。むしろ電気で点くライトが普及するまではケロシンランタンが街灯や家庭の灯りだったわけで、ケロシンランタンで灯りをとるのは自然な行為です。
だって「灯」油ですよ? 灯りで使わないでなにに使うの?って話です。
◆ケロシンランタンの灯火の仕組み
前回の投稿でも触れましたが、灯油はガソリンと違って引火温度が40℃以上と、日常の気温より高い温度下でないと引火しません。
「引火」とは、他に火元があって、それが近づくことでガス化した成分に燃え移る現象です。引火を起こすには気化した燃焼体と空気が混ざってできる「混合気(ガス)」が必要なので、灯油が液体のまま直接燃えることは基本的にはあり得ません。
類義語に「発火」がありますが、これはそれそのもの(ここでは液体のままの灯油)が火を発生することです。
灯油の発火温度は約255℃以上らしいので、自然発火することは日常においてはあり得ません。
話を元に戻すと、ケロシンランタンはこの「引火」の方法を取り入れています。前述のプロセスで言えば、液体の灯油が温められて気化し、空気と混ざってガス化して、火に近づく。この順番。
ケロシンランタン特有の「プレヒート(予熱。灯油の通り道を温める)」という行為は、これを行っているのです。
ガソリンは-40℃から気化します。つまり通常の気温で外気に触れれば自然に気化してくれる。灯油はそれができないので人為的に気化する環境を作り出す必要があります。これがプレヒートです。
その気化灯油に、ベンチレータから取り込んだ空気を混ぜてガス化させる役割をバーナーヘッドが担い、バーナーから噴出したガスに予熱の残り火が近づくことで引火します。
ここまでやらないと、灯油は本来は「燃えない」のです。ですから再度言いますがランタン程度ではよほど気化が促進されるなにかがない限り、火事になるような大炎上もなければ爆発もしません。前回の投稿でも書きましたが非常に安全です。
これがガソリンランタンではだいぶ様子が変わってきます。
ガソリンランタンでは気化しやすいホワイトガソリンの性質を活かして、プレヒートすることなく噴出した燃焼体に火をつけます。いくら自然に気化するとはいえ十分にガス化できていない液体混じりの燃焼体なのでおのずと一時的に炎上するんですが、炎上によってグローブ内が温められ、その後の追加ポンピングで正常燃焼に辿りつきます。
ガソリンランタンでは炎上が通過儀礼として存在しているんですね。(ジェネレータをライター等で少し炙って温めれば炎上させずに点けられるそうですが、気化したホワイトガソリンが漏れていたらライターの炎で引火するのでこれはこれで危ないような気がします)
とにかくホワイトガソリンはすぐ気化するので、焚き火の近くやタバコを吸いながら扱うのは非常に危険です。
・・・なんかガソリンランタンをディスってるみたいになっちゃいましたが、そんな意図ではありません。
私もガソリンランタンは持っていましたので。(燃料ダブルはキツくてケロシン化しちゃいましたが)
◆不完全燃焼
さて、ケロシンランタンはこの無理矢理発生させた混合気に引火させてその炎をマントルに吹き付けることで、マントルの発光体が光って灯りになるわけですが、気化プロセスになんらかの問題があり十分に気化できていないと、空気との混合が十分でない灯油が噴出され、それが炎上に繋がります。「不完全燃焼」と言われている状態。青火ではなく赤火(オレンジに近い)になる現象です。
上の写真は予熱不足のまま灯火させたときの写真です。マントルの周りにほんわり炎を纏っているのですが少し分かりづらいですね。
「不完全燃焼をがんばる」という訳のわからないことを敢行したわけですが、いつもはやらかしちゃう炎上も意図的にやろうとすると意外と難しい。。。ビビっていつもよりちょい短いくらいのプレヒートになっちゃいました。ビビりです。
とはいえ元は引火点の高い灯油です。タープを突き破るような火が立ち登るわけではなく高くてもフードから少し炎が覗く程度です。さすがにそのまま放置してはいけませんが、エアリリースキャップを緩めて圧抜きをすれば灯油の噴出が止まり火は消えます。
また不完全燃焼は煤を排出します。ガス化できず粒子の大きい気化灯油(混ざり物がまだある状態)に火をつけてしまうので燃えカスが出てしまうんですね。
フードやグローブが真っ黒になってしまうのはこの煤が原因です。焦げちゃってるわけではありませんのでご安心を。ただしグローブに長時間直火を当てると耐熱ガラスとはいえ溶けてしまいますので、炎が見えたら速やかに消火しましょう。
ランタンに灯りが灯る仕組みは前述のとおりなので、炎上(不完全燃焼)が起こるとなれば自ずと原因は絞られます。
気化がうまくいっていない(予熱が足りない or 通り道の異常)か、空気との混合がうまくできていない(バーナーが空気を吸いきれていない)のいずれかです。
発生比率でいうと『予熱不足:80%』『通り道(ヴァポライザー / ジェネレータ)の異常:18%』『バーナー不良:2%』くらいの割合でしょうか。比率は私の肌感なのでアテになりませんが、とにかくほぼ予熱不足が原因です。
予熱不足であれば、一旦消火してあらためて予熱をしてあげればよいだけです。大したことではありません。
ただ予熱しなおしても不完全燃焼が収まらない場合、ここで初めてパーツの異常を疑うことになります。
ちなみに灯火異常は今回話題にした『炎上(不完全燃焼)』が有名ですが、『点滅する』『暗い』などの異常もあります。燃料を燃やして灯りに変換する、仕組み的には単純な道具なので、『正しく燃える』か『不完全燃焼』か『燃えづらい(燃え方が安定しない)』かのいずれかで、後者2つが異常状態です。
次回はいよいよこの『灯火異常』を解説します。まだ道のり半ば・・・