2022/02/20 11:30
ブログを更新するのはいつ以来でしょうか。
気づいたら半年近く経過していました。その間にサイト名を変更して「リニューアルするぞ!」と宣言した割には何もやってないという、仮にもネット販売サイトのオーナーとしてあるまじき日々を過ごしてきましたが、その間にもたくさんの方にご利用いただき、感謝に耐えません。猛省。
そんな私の反省は一旦置いといて、前回の投稿ではM320をモデルにバラすところまでご紹介しました。半年間バラしっぱなし。
前回の記事はこちら。
今回は、ついにワッシャー(パッキンともシールとも言いますね)を交換して組み立てるところまでをご紹介します。
ではさっそく。
■ワッシャーとは?
上の写真は私が販売しているワッシャーセットの内容物です。
そもそもワッシャーがなんの役目を果たしているのか、そこを理解すればここから先の手順が分かりやすくなると思いますので、まずはワッシャーの役目をご説明します。
ワッシャーの役目は、ズバリ「漏れ防止」です。
ランタンなどの火器は金属でできていますので、金属のパーツ同士が接続する場所にはどんなに精巧に作っても空気も漏れないほどピッタリとはいかず、必ず隙間が生まれます。
随分前に灯油ランタンの構造をご紹介しましたが、タンクに貯められた燃料(灯油)は、ポンピングによって与えられた圧力によって、唯一開いた逃げ道(ヴァポライザー)を通って噴出します。
このときに燃料が通る道中に隙間があってはそこから漏れてしまいますよね。この道中にはコックやヴァポライザーという分離する金属パーツが接続されていますので、この隙間を埋める必要があります。
また圧力を貯めて逃してはいけないタンクには、ヴァポライザーに向かう箇所以外に穴があってはいけないのですが、そもそも燃料を入れる給油口がなくては燃料を入れられませんので、その穴を完全に塞ぐ必要があります。ポンプから空気を送り込む部分もそうですね。
このように、燃料の道中や圧力維持に関係する場所にある金属の接合部に、その隙間を埋めるためにあるのがワッシャーです。
ワッシャーは必ず潰れる素材でできています。北欧系だと一部のワッシャーにリード(鉛)が使われていたりしますね。VAPALUXやTILLEYは耐熱ゴムが使われています。いずれもワッシャーが潰れることで金属接合部の隙間を埋めていますので、逆に潰れるくらいの強さで締める必要があります。
こうして高い圧力で押し潰され続けるワッシャーは、経年によってゴムの硬化が進んだり潰しすぎて裂けてしまったりと、たまにトラブルを起こしますので、交換してあげる必要があります。
■ワッシャーを交換してみる
さて、この理屈がわかれば、自ずとどこにワッシャーが必要かがわかってくると思います。
ご覧の通り、タンクには3箇所の穴が空いています。まず燃料を入れる給油口、エア(圧力)を入れるポンプ、そしてコック〜ヴァポライザーへとつながる燃料の出口です。
まずはここを塞ぐ必要がありますね。
上の写真はワッシャーの取り付け部位のみを集合させた写真です。
右からNRV(ノン・リターン・バルブ)、給油口キャップとエアリリースキャップ、コントロールコック(ジェット)、ヴァポライザーですが、このうちNRVがポンプ・アセンブリを、給油口キャップとエアリリースキャップが給油口を塞いで、燃料の出力ルートをコントロールコックのみにしています。
NRVをさらに分解するとこうなります。
NRVは、タンクに空気を送り込むけど燃料は逆流させないという機能を備えた、シンプルな構造ですが何気によく考えられたパーツです。
NRVの中にはその「空気を送り、燃料の逆流を防ぐ」ための、肝のワッシャーがあります。
それがこれ。多少形や大きさは違えど、VAPALUXもTILLEYも北欧系も同じような構造になっていて、この米粒大のワッシャーがあります。
普段触れることはないですが、実は常に圧力をかけられているワッシャーなので、知らないうちに硬化します。
NRVの中の真ん中のパーツの先端が窪んでいてそこに嵌められます。元からついていたのが硬化していて取りづらい場合は、千枚通しのようなものを使うといいです。くれぐれも指を刺さないように気をつけてくださいね(経験者談)。
またNRVはタンクにネジ込んで取り付けるのですが、金属同士の接合点になるのでここにもワッシャーがあります。NRVのヘッドパーツの周りに見える輪っか上のワッシャーがそれです。
交換が終わって組み立て直したら、NRVをタンクのポンプ穴に戻します。マイナスドライバーで締め込むのですが、このときはゆっくり・しっかり締め込んでください。
急ぐとNRV外周のワッシャーが歪んだまま締め込まれてしまって劣化の原因になりますし、しっかり締め込まないとポンピングした後にここから灯油が漏れてくる原因になります。
最後にググッと締めて、もう動かないな・・・くらいしっかりと、です。
給油口キャップにはもちろんのこと、亀の子のように乗っかるエアリリースキャップにもその内側にワッシャーが仕込まれていて、タンクの圧力が漏れるのを防いでいます。
ネジの段差で入れづらいので、割り箸の先端などで押さえ込みながらしっかり入れてください。曲がったり浮いた箇所があるとそこから灯油と圧力が侵入して劣化が早まってしまいます。
給油口キャップとエアリリースキャップを接続したら、割りピンで止めてください。ラジオペンチがあると便利です。
ちなみに割りピンはエアリリースキャップの紛失防止用のパーツなので、なくても使用上の問題はありません。
ここまででタンクに開いた3つの穴のうち、2つの穴は塞がれました。
次は唯一塞いではいけないけど漏れてもいけない、燃料の出力ルートの「コック」と「ヴァポライザー」です。
コックはタンクにネジ込むように作られていますが、ここも金属同士。コックの根本はピッタリとはいかず、ワッシャーが必要です。
コックにはヴァポライザーがネジ込まれますが、ここも同じく金属同士。ヴァポライザーの根元にもワッシャーがあります。
ヴァポライザー用のワッシャーは、NRVの外周用のワッシャーと外径がほぼ同じサイズなので見分けづらいですが、内径が狭い方がヴァポライザー・内径が広い方がNRV用です。
また、コックにはノブにつながるスピンドルがついています。スピンドルは燃料の噴出をニードルを使ってコントロールするために燃料の出力ルートに横穴を開ける形で取り付いていますので、何もしなければ当然ここから漏れます。
その漏れを防ぐためにグランドナットがあるのですが、これも金属同士。ワッシャーが必要ですね。
スピンドルにワッシャーをはめてからグランドナットを締め込むだけです。
グランドナットの締め込みは、しっかり締めないと漏れるのですが、締めすぎるとノブが動かしづらく(固く)なります。このあたりの力加減には慣れが必要ですが、漏れないのが一番なので、慣れるまでは多少きつくてもしっかり締めてください。
以上、合計7箇所。
これらのワッシャーを全て交換すれば、どんなにオンボロなランタンでも、タンクに穴が空いてたりしない限り、まず灯油を正常に出力することはできるようになります。
ワッシャーをハンドメイドされる方々もいらっしゃいますが、0.1mm単位で正確性が問われるパーツではないので、ハンドメイドも十分できます。(ただし耐熱・耐油性の高いゴムを使ってくださいね)
さて、交換が完了したら元通りに組み立てましょう。
順番はさほど気にする必要はありませんが、忘れん坊の私は取り付け忘れが怖いので、下から順番に組み立てるようにしています。
意外と順番があるのがフレームの組み立て順。M320だとまず先にフレームを乗せリングナットで仮止めしてからコックを挿入して締め込みます。
コックをしっかり締め、コックから出ているスピンドルの位置を確認してから、フレームを回してフレームを止めるポジションを決めます。
ベイル(ハンドル)の位置がお好みの位置に来るようにフレームを何回転かさせて、位置が決まったらリングナットを締め込みます。
この時、フレームの位置の調整のためにコックを緩めてしまったりすると、燃料漏れの原因になります。
多少お好みの位置からズレたとしても、燃料漏れでタンクやデカールにダメージが出てしまうようなことにならないように、あくまでコックの締め込みを優先しましょう。
後はヴァポライザー、プレヒーターカップ、グローブ、フードと被せれば終わりです。
慣れればバラし始めてからワッシャー交換を済ませて組み直すまで、15分程度でできます。
北欧系のように鉛ワッシャーで鬼のようにキツく締め込む箇所がないので、VAPALUXやTILLEYのワッシャー交換はお手軽です。