2022/06/12 12:33
VAPALUX / Bialaddinの系譜をまとめ終わって1年ほど経ちますが、あれからも少しずつ集め続けていまして、今回はVAPALUX / Bialaddinのモデルの中でも、主に輸出用に作られた(つまり本国イギリスでは見つからない)モデルをご紹介します。
イギリスにはないモデルと言ってもそれぞれ元となったモデルはあるわけで、違いはわずか。端から見れば「それがどうした?」な話ですが、「ここまできたら全種集めたい」病を発病してしまいますと、こういうモデルも見逃せなくなってきます。
そもそもイギリスにないので、入手経路も不安定。どこで出会うか予想もつかない状況でそれとなく探し続ける・・・なんとも気長な話ですが、少しずつゴールに近づいてきていて実は自分なりにザワザワしています。
こんななんでもないことでセルフ・ザワザワ。便利な性格です。
そういうわけで、前回(Willis and Bates と Vapalux / Bialaddinの系譜 ⑧)の中でも少し紹介したImber Research 305を含め、今回は3台のランタンをご紹介します。
■Imber Research 305
Imber Research社は、Bialaddin社のCEOだった実業家のJack Imber氏が代表を務めた、Aladdin社の研究開発部門です。Aladdin ブルーフレームヒーターの原型の「I・Rヒーター」が有名ですね。
一時期、このImber Research社のブランドでもランタンを製造していて、本機はその1台です。
輸出向け、とりわけAladdin社のお膝元のアメリカ大陸に「Bialaddinブランド」で販売しては市場を混乱させるので、Imber Researchブランドを使って流通させていたようです。
そのため入手は極めて困難。
本機は何気なく日課の「ランタン探し」をしてたら、たまたまGoogleの画像検索で捕まえました。画像の出元はウルグアイのフリーマーケット。
見つけたからといって当然すんなり入手できるわけではありません。ウルグアイには行ったこともありませんし知り合いもいません。もちろんスペイン語もさっぱり。
それでも諦められず、入手に向けてあれやこれやと策を凝らしました。
幸い現地在住の日本人の方にご支援いただくことができて、その方に支払いと荷受けと日本への発送をお願いして、見つけてから半年かかって私の手元に届きました。届いた時の私のテンションは我ながらヤバかった 笑
Imber Researchモノが私の探索に引っかかったのは後にも先にもこれっきり。もう一台見つける自信は全くありません。
台数は少ないものの、モデルはこちらのImber Research 305と、同じく310は写真等で確認済み。315もあったようですが写真を見たことはないのでハッキリしたことは言えません。
ご覧の通り仕様面での違いはありません。消耗品もそのまま使えます。違いはカラーのロゴだけ。
そんなモノのためにここまでやるのもどうかと思いますが、そもそもヴィンテージランタンを蒐集すること自体がどうかと思うようなことですので、気にしないことにしています。
気にしたら負け。
■Bialaddin 400F
こちらはBialaddinがフランス市場向けに用意したモデルです。
といっても例に漏れず、従来のモデルの名前を変えただけ・・・かと思いきや、細部の仕様が違っています。
ヴァポライザーやほとんどの消耗品は同じなので、メンテに困ることはありませんが、ご覧の通りバルブノブやポンプの留め具・給油口キャップのデザインが違っています。
なんだか北欧系ランタンに近いデザインのような気がします。
タンクにデデ〜ンと刻印されたロゴも特徴的。これもヨーロッパ系のヴィンテージランタンに見られる特徴ですね。
MODELではなくMODELEです。モデーレ。なんだかエスプリを感じます?
ロゴ上部にある「BREVETÉ
S.G.D.G」とは、1968年にその役目を終えたフランス型特許(「特許権は認めるけど、その技術的価値や使用に関する保証はしませんよ」という、結構ドライな特許)ですので、本機の製造は1968年以前であることがわかります。
ていうかBialaddinの製造も奇しくも1968年までですので、自ずとそうなるんですけども。
話は変わりますが、このフランス型特許の「BREVETÉ
S.G.D.G」の範囲は多岐に渡り、身近な生活品にまで及んでいます。
ebayを見てると、いろんなアイテムで「BREVETÉ
S.G.D.Gモノですよー」という記載を見かけます。ヨーロッパでは比較的有名な特許なんでしょうね。
フランスのebayを見ているとたまにBialaddinは出品されていますので、通常のモデルも流通していたことが伺えます。逆に400Fが出てくることはほとんどありません。
400Fが生産された背景はよくわかっていないのですが、通常のモデルも流通していたこと・パーツが微妙に異なったり、タンクにデカデカと刻印が入っていること、カラーの刻印はそのままであることを考えると、フランスのどこだかの商社向けに製造したラインナップなのかもしれません。
400Fにも305(民間用)タイプ・310タイプ・315タイプがあるようですが、こちらは305(軍用)からの転用でしょうか。
カラーには思いっきり「Bialaddin 305」と刻印されています。軍用のそれとの違いは製造年がないだけです。
■VAPALUX M1B
VAPALUX M1Bは現在でも韓国VAPALUXで製造されているので、パッと見はもはやそれとの違いすらわかりません。
本機を最初に製造したのは、1997年にWillis and Batesから製造に関する一切の権利を引き継いだBairstow Brothers。当時軍部もLEDへの切り替えを始め、もはや加圧式ランタンの市場はどこにもなくなった頃合いなのに、その製造ラインと権利を引き継ぐBairstow Brothersもだいぶ男前ですが、いくら男前でも赤字じゃどうしようもありません。
幸い軍からのバックオーダーはまだ残っていたようで、2006年まで(たぶん引き継ぎから10年間のお約束だったんじゃないかと推測)はM320の軍納が続くものの、契約が切れるのがわかってて他に手を打たないわけもなく、こちらのM1Bや、ヘリテイジ・シリーズとしてM320 Chromeの復活など、民間市場に訴求する新製品?をそれなりには発売しています。
タンクとカラーの繋ぎ目は、M1のようなボルト留めではなくM320のようなリング留め。
最初ボルトがないから「溶接されてんのか???」ってなった。現行品を触ったことがないから逆に新鮮でした。
現行品はこのナットがM320のと同じモノ(円形)のようですね。こちらは6角形の専用ナットが使われています。
Bairstow Brothers時代のM1Bの特徴は、タンク裏にBroad Arrowマークが刻印されていること。
本来軍用にしか刻印されることのないこのマークが刻印されている背景は、M320の余剰在庫があてがわれたことによるものですが、現行品との違いはここだけじゃないかな?現行品には韓国VAPALUXのロゴマークが刻印されているみたいですね。
吊るさないとわからない違い。ていうか吊るしてもよ〜〜く見なければわからない程度の違い。
レギュラーモデルじゃないこうしたモデルにはそれが生まれた背景があるわけで、実物を見つけて手に入れて、眺めながらその背景を考察していくのは、由緒正しきヴィンテージの嗜み方の1つですよね・・・?
そうじゃない?いやそうでしょ?お酒と一緒です。一緒か???
これからも妙なのを見かけたら少しずつ集めていくつもりですが、他にどれくらいあるのかな?